賢治の童話では「風」が吹くと”異界”が現れる。と講師は言ってたけど、
これは宮沢賢治が愛読した中里介山の小説「大菩薩峠」の影響を受けているのではないか。介山は机竜之介の登場場面を次のように書いている。
「この若い武士が峠の上に立つと、ゴーッと、青嵐《あおあらし》が崩《くず》れる。谷から峰へ吹き上げるうら葉が、海の浪がしらを見るようにさわ立つ。そこへ何か知らん、寄せ来る波で岸へ打ち上げられたように飛び出して来た小動物があります。」
そして、宮沢賢治は「大菩薩峠を読みて」という詩歌の最終節をこう結んでいる。
「日は沈み 鳥はねぐらにかへれども
ひとはかへらぬ 修羅の旅 その竜之介」
介山と賢治、深い所で繋がっているようだ。